03.Meet with

Cul de Sac - JAPON

青森ヒバプロダクトのブランド、Cul de Sac - JAPON。青森ヒバの材木屋で生まれ育ったデザイナー村口さんの、ヒバの持つ魅力を広めたいという思いでプロダクトが生まれています。
今回は、青森ヒバのプロダクトに込めている想いや、MABOROSHIとのプロジェクトについて、お話を伺いました。

公式URL:http://culdesac.jp
オンラインストア:https://store.culdesac.jp/
Instagram:@culdesac_japon、@culdesac_works

プロダクトに込めている想い

-青森ヒバの魅力、可能性-

断然、香りだと思います。青森ヒバには抗菌、防虫、消臭、リラックスなどの効用があるからこそ素晴らしい木だとは思うのですが、魅力となると、やはり香りなんだと思います。
本来の使用用途である、建材(主に基礎材)として使用できたら理想的ではありますが、生活スタイルが変化した現代で、青森ヒバを知らない方にも伝わりやすい魅力として「香り」を大切にしています。

-青森ヒバは元々何に使われていた木なのか-

昔からシロアリの被害を受けず、腐食に強く耐久性に優れた建築用素材として、神社やお寺の基礎、柱や梁に使われている建材です。

-青森ヒバの名前について-

日本中にヒバはありますが、その中で青森に生えているヒバは「青森ヒバ」と呼ばれます。(能登では「能登ヒバ」と言います。)
特徴としては、寒く厳しい自然環境でスギやヒノキの3倍もの時間をかけて成木になります。約100年〜200年かけて成木になった青森ヒバは、木目が美しく香りも奥深くなります。

-建材に使われる青森ヒバという木で、Cul de Sac-JAPONを始めた理由-

元々、うちの実家は青森ヒバの材木屋です。とはいえ、建材の他にまな板やお箸、そして製材する際に出る端材を利用した様々な木工品を作っていました。いつからか新たな商品を作る度に、父が私にパッケージなどの相談をするようになってきて。私は、長い間ファッションの世界で仕事をしていたのですが、徐々にその視点で木材のブランディングをしてみたいなと思うようになっていました。もちろんそんなに簡単でない事は容易に想像できましたが、父をはじめ工場のスタッフ、そして地元の企業や職人さんの協力のもと、このブランドを始めることができました。

-プロダクト作りへの想い-

作る根本、というか理由としては、青森ヒバが持っている魅力や効果を感じられる商品づくりを何よりも大切にしています。起点は絶対素材ありきで、「別にこれをヒバで作る意味はなくない?」というものは、最初ブランドを立ち上げる時に全部外しました。他の香りとミックスしたサンプルも色々と作りましたが、逆に青森ヒバの特徴が伝わりにくく感じ、青森ヒバのみを使ったプロダクトに集中させました。
そして、初めての展示会で何より驚いた事が、ほとんどの方が青森ヒバを知らなかった事でした。私にとっては、生まれた時から身近にあったあたりまえが、こんなに新しいものとして受け取られるのかと。その展示会の初日に「青森ヒバを広めたい」と本気で思いましたね。
それから、建材として使いにくいものなど、それをどのように活かすかは、常に心掛けています。実家が工場なので、現場で「こういう丸太が使いにくいんだ。」というのを常に見てきました。例えば、丸太の仕入れも難しいようで、購入時にまずはどのような丸太があるのかリストから選ぶのですが、やはり自然のものの為、思うような丸太だけとはいかない部分がありまして。間伐をすることも山にとっては必要で、現在の森林状況を少しでも改善する上でも、その間伐材をどう使うかとか。だから、当初の考えから少し修正し、他の木でも出来る商品、例えばペットテーブルとか、ヒバである必要が無いものでも、魅力を知ってもらえるきっかけとなるプロダクトとして作り、間伐材などを利用することにも取り組んでいます。

-Cul de Sac-JAPONのこだわり-

今の時代的に「廃材を利用して」というワードを使った方がいいのかもしれませんが、青森ヒバの廃材となる部分は、「白太」と呼ばれる丸太の外側です。この部分には、油があまり含まれていない為、香りも薄く腐食にも弱いです。通常、ウッドチップは、廃材となるこの「白太」部分で作られ、主にパルプなどの原料となっています。
私たちは、この「白太」は使わず、丸太の中心部分を使用する建材を製材する際に出る端材を使用してウッドチップを作っています。 そして、廃材となる「白太」は、木材を乾燥する際の燃料として使用されています。
要するに、もし廃材だけで製品を作っていたら、この香りは出ないです。
あくまで、ヒバの魅力を余すことなく伝えたいという思いで、プロダクトを製作しています。
だからこそ、そこにエコ感は出したくないというか、出来ることを最大限行っているという感覚でいます。

-Cul de Sac-JAPONの全てのプロダクトから自然を感じられる理由-

青森ヒバの中で育った私にとってこの香りは工場の香りだったので、青森ヒバの良さを考えたこともなかったように思います。東京の生活が長くなってから、青森ヒバの香りに気づいたのかもしれませんね。
日本の針葉樹の香りには最初、緊張感がありますが、最後は温かみや多幸感で終わります。まさに、神社などに行った時に感じる、緊張はするけれど、最後に多幸感が訪れる感覚。人工的に作ったものや単一的な木の香りでは、ファーストの緊張感しかなくて、余韻として広がる温かみを感じるのは、自然のありのままを活かしている物だなと感じます。

MABOROSHIとのプロジェクトについて

-MABOROSHIから誘いを受けた時の感想-

お誘いを頂いた時はとても嬉しかったです。ブランド立ち上げの時に他の植物と混ぜた香りを色々と試作していたので、そういうことをやりたいなとは思っていたのですがまだ出来てはいなくて。さらに、それが今まで思ってもいなかった「お茶」だったので、より想像が出来なくて、最初に試作した時に「合うんだ!?」って。それは嬉しい裏切りというか、結果的に相性がとてもよく、驚きでした。

-MAISONの香りを作ることに対して-

私は元々、渥美シェフのお料理だけでなく、その世界観に惹かれていました。なので、ブランドを立ち上げた2016年頃に訪れたパリで、どうしてもと思い、その当時渥美シェフが腕を奮っていたレストランに弟と行ったのです。しかし、行ったはいいものの、当時はお金に余裕があるわけでなく困っていたら、たまたま渥美シェフが出ていらして、こちらの事情を知った上でおすすめのメニューの説明をしてくださって。その優しさがとても嬉しく、強く記憶に残っています。なので、今回MAISONの空間をテーマに香りを作れたことは、感動と一種のご縁を感じました。

-maboroshi41 for MAISONの香りについて-

MAISONの考える、「食事に収まらず、MAISONで体験する全ての時間を楽しんでもらいたい」というメッセージを香りで表現してみました。ベースとなる『maboroshi41 for kouro』のお茶の香りに、どう青森ヒバの持つ性格を合わせるか。想像のつかない挑戦でしたが、試行錯誤の中でお互いの良さを引き出しつつ、MAISONの空間に寄り添い、その魅力を拡張できるプロダクトに仕上がったと思います。

-これからのMABOROSHIプロジェクトについて-

一緒に楽しみましょう、という感じですね。行けるタイミングで、パリのMAISONにも行きたいです。