01.Meet with
Perfumer

Barnabe Fillion

先ず、自己紹介から。
私の名前はBarnabe Fillionです。フランスを拠点に、メキシコや日本で活動しています。
香水業界で香りの創造におよそ15年ほど携わっています。

-MABOROSHIプロジェクトの提案を受けた時の印象は-

私がMABOROSHIでディレクターを務める丸若とパリで出会ったのが2015年。その後、少し期間を開けて一緒に日本の九州を旅し、お茶の栽培を見に行きました。そこで茶の儀式やそれに関わる香りを体験し、初めて触れた茶香炉にも感動しました。以来、丸若と交友関係を築き、お茶をテーマにどんな香りを造ることが出来るか話すようになりました。それは、僕にとって同じパッションを持った友人同士で物造りをする感覚でした。そうした期間を経て生まれたMABOROSHIプロジェクトがスタートする時に、アートディレクターのエリックやコミュニケーションのサラと一緒に声を掛けてもらうことができ、とても光栄に感じました。

-このプロジェクトでの役割は-

私は最初に、チームがセレクトした原材料である茶、茶葉の香り分析から始めました。それらを混ぜ合わせたり、同じ世界観の香りや、或いは全く異なる香りを併せたりして、茶香炉に載せた時に空間に放たれる香りを想像しました。その結果、辿り着いた香りをベースにして、精油を造りました。

-MABOROSHIの香りに込めた想い-

仕上がった香りの最も気に入っている点は、100パーセント自然物を使用したことです。原材料に通常では使わないような希少なものを扱ったおかげで、広がりのある上質な香りが生まれました。そこに日本の魂、人との距離感、アグレッシブではあるけれど控えめでもある日本の姿が表現されていて、それは良質な資源や自然が人間に与えてくれた恵みだと思っています。

-自然と人間との調和、関係性について-

私は日本には自然をリスペクトし、崇敬する心があると思っています。自然がもたらすエネルギーや静けさや木から受け取る恵みは、豊かさや安堵感と云うお祝いのような物で、自然と人間とが調和する関係には、大きな意味があると感じています。

-異文化の交わる魅力について-

僕はこのプロジェクトのメンバーは皆んな日本にパッションを持ち、同じ方向性を持っていると思っています。また、フランスに住んでいる日本人達も僕たちの文化にパッションを持っています。
面白かったのは「日本の森にある苔とヨーロッパの森にある苔は同じ香りがするのか」と云う疑問から端を発し、今回は日本の苔をフランス式の調香オルガンを使って、南仏グラースで蒸留して素材を造ることにしたのです。そうして僕たちは「大陸を渡った苔」と云うアイディアに辿り着きました。この経験から、僕の仕事のスタイルはとても豊かになりました。
自分にとって、文化の交わりを感じられるこのMABOROSHIプロジェクトは、魅力的で興味深い取り組みです。